「人工股関節置換術、CTナビゲーションシステム」の紹介
人工股関節置換術とは
変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、急速破壊型股関節症などの疾患が原因で股関節の軟骨および骨破壊が進行し痛み、歩行障害、可動域制限が生じて日常生活に支障をきたした場合に適応となる手術方法です。変性・破壊された股関節を人工物であるインプラント(金属、ポリエチレン、セラミックス、骨セメントなどにより構成)により置換することで股関節の機能回復が期待できます。
麻酔について
当院では麻酔医による全身麻酔にて手術を行っております。手術前には麻酔科の受診もしていただきます。
人工股関節に使用するインプラントについて
骨に設置するインプラントは耐久性いわゆる長期成績が重要となります。過去においては早期に不具合が生じてしまった機種もありました。
現在、長期成績の実績のある人工股関節インプラントでは手術を行った9割以上の方で20年以上耐久可能とされています。
人工股関節のインプラントを取り扱っている企業は国内外に多数ありますが、インプラントの機種自体も多種多様存在しています。
当院では国内外で広く使用されており長期成績の実績のあるインプラントを主に手術に使用しております。
またインプラントには骨セメントを使用するタイプのものと使用しないタイプのもの、両者を組み合わせたハイブリッドタイプのものが存在します。
ニュージーランドの大規模レジストリー研究の報告ではハイブリッドタイプ(骨盤側はセメント使用せず、大腿骨側はセメントを使用)の人工股関節が若年者および高齢者ともに長期成績が良好であったと報告されております。当院では2020年よりハイブリッドタイプの人工股関節置換術を主に行っております(図1)。
ただし、患者様の骨の形や質によっては別のタイプの人工股関節を採用する場合もあります。
現在、長期成績の実績のある人工股関節インプラントでは手術を行った9割以上の方で20年以上耐久可能とされています。
人工股関節のインプラントを取り扱っている企業は国内外に多数ありますが、インプラントの機種自体も多種多様存在しています。
当院では国内外で広く使用されており長期成績の実績のあるインプラントを主に手術に使用しております。
またインプラントには骨セメントを使用するタイプのものと使用しないタイプのもの、両者を組み合わせたハイブリッドタイプのものが存在します。
ニュージーランドの大規模レジストリー研究の報告ではハイブリッドタイプ(骨盤側はセメント使用せず、大腿骨側はセメントを使用)の人工股関節が若年者および高齢者ともに長期成績が良好であったと報告されております。当院では2020年よりハイブリッドタイプの人工股関節置換術を主に行っております(図1)。
ただし、患者様の骨の形や質によっては別のタイプの人工股関節を採用する場合もあります。
手術前
手術後
図1.左変形性股関節症に対する人工股関節置換術施行例
手術中CTナビゲーションシステムについて
人工股関節の合併症のひとつである脱臼を予防するためにはインプラントを骨に対して正確な角度および位置に設置することが重要であることがわかっております。
当院では2020年より術中CTナビゲーションシステムを採用しております(図2)。
手術前に撮影した患者様のCTの画像データをナビゲーションシステムに組み込みます。
手術前にインプラントの大きさや角度などを計画することができ(図3)、さらに手術中はリアルタイムに患者様の関節と、ナビゲーションシステムの画面を確認しながら手術を行うことが可能です。
そのため骨をより正確に削り、正確なインプラントの角度設置も可能となります。その結果、脱臼率の低減にもつながります。
当院では2020年より術中CTナビゲーションシステムを採用しております(図2)。
手術前に撮影した患者様のCTの画像データをナビゲーションシステムに組み込みます。
手術前にインプラントの大きさや角度などを計画することができ(図3)、さらに手術中はリアルタイムに患者様の関節と、ナビゲーションシステムの画面を確認しながら手術を行うことが可能です。
そのため骨をより正確に削り、正確なインプラントの角度設置も可能となります。その結果、脱臼率の低減にもつながります。
図2.ナビゲーションシステム(図提供:ストライカー社)
図3.ナビゲーションシステムによる手術前計画
手術後のリハビリテーションについて
手術後は通常翌日からリハビリを開始します。立位訓練や歩行器歩行などから開始し、約2週間で1本杖歩行もしくは杖無し歩行にて自宅退院となります。
経過良好な方では早期に自宅退院可能な場合もありますが、手術の傷が問題ないことが確認できる手術後2週間は入院していただいております。
一方、後期高齢者の方や独り暮らしをされている方で2週間近くの入院では不安がある方は、近隣の回復期リハビリ病院へ転院して入院リハビリ期間を延長することも可能です。
経過良好な方では早期に自宅退院可能な場合もありますが、手術の傷が問題ないことが確認できる手術後2週間は入院していただいております。
一方、後期高齢者の方や独り暮らしをされている方で2週間近くの入院では不安がある方は、近隣の回復期リハビリ病院へ転院して入院リハビリ期間を延長することも可能です。
人工股関節置換術合併症について
- 感染
細菌などの病原体により創部およびインプラントの入った股関節内部が汚染される合併症です。手術前の消毒、クリーンルームでの手術、手術前後の抗生物質の投与など感染を予防する対策を行いますが、1%未満と低い確率ですがまれに生じることがある合併症です。感染が起こった場合には再手術による洗浄、抗生物質の投与により治療しますが、状況によっては再手術によりインプラントを抜き取り、感染が治ってから人工関節再置換術を行う場合もあります。 - 出血
削った骨の内部や細い血管から出血が生じます。手術中の出血量はおおよそ200~500mlです。輸血が必要でない場合もありますが、当院では貧血のない方に対して万が一に備えて手術約1カ月前に自己血貯血(患者様自身の血液を採取保存)を希望に応じて実施しております。 - 脱臼
一般的には初めて人工股関節置換術を受けた方に発生する確率は1%前後とされております。当院ではCTナビゲーションシステムの使用により正確なインプラント設置が可能となり脱臼率の低減につながっています。 - 神経損傷
発生率は1%未満と低い合併症ですが、生じると下肢の痺れ、筋力低下(麻痺)が出現します。生じた場合でも約8割は回復しますが、稀に後遺症となる場合もあります。 - 深部静脈血栓症、肺塞栓症
人工股関節の手術後には深部静脈血栓症(下肢の静脈に血の塊ができて血管をふさいでしまい、血流が悪くなり、下肢がはれたりすること)が生じやすくなります。この血栓が血流に乗って肺の血管をふさいでしまうのが肺塞栓症です。手術後は血栓発生の予防のために弾性ストッキングや弾性包帯を着用していただきます。 - 骨折
インプラントを設置する際に生じる可能性があります。また手術後に転倒した場合などにも骨折を起こす場合があります。セメントを使用するインプラントを用いることにより発生する可能性はかなり低くなります。 - インプラントのゆるみ・破損
長期成績の実績のある人工股関節インプラントでは手術を行った9割以上の方で20年以上耐久可能とされていますが、時間の経過とともにインプラントのゆるみや破損が生じる可能性があります。その場合には再手術が必要となります。手術を行った方は手術後1年以後経過した場合、半年から1年ごとの定期的な外来通院をしていただきX線のチェックを行う必要があります。
院内骨バンクについて
当院では院内骨バンクを設置しております。過去に行った人工股関節のゆるみなどが原因で骨の欠損が存在する場合でも同種骨移植を併用することにより人工股関節再置換術を行うことが可能です。